Todd Rundgren (2)

トッドの音楽語るのには、サイケデリックとかサイケとかっていう言葉を説明しないといけないですね。

Psychology (サイコロジー=心理学)に由来する言葉がなぜヒッピー文化の絵画、映画、音楽の必須要項になったのか・・・・?

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1943年に偶然合成され、50年代に医薬品として登場した幻覚剤、LSDは当初心理学者によって精神異常者の治療などに使われました。
チェコの臨床心理学者、スタニスロフ・グロフはチェコ国内でLSDの臨床実験を続け、70年に共産圏を逃げ出してアメリカに移住、そこで新しい心理学の探求に乗り出します。 

つまりLSDとは心理学者のツールとして使われたのです。

LSDのもつ強力な幻覚作用下で眺める世界は既存の価値観から解放された、非常に客観的な世界であると同時に
あるセッティングのもとで摂取すると逆にきわめて主観的に歪んだ世界を現出せしめます。
それがために使い方を間違えると精神にダメージをきたしたり、最悪の場合肉体的な事故に至るほど危険なものでもありました。

これがヒッピー、あるいはその前段階であるビートニクと言われた人々に麻薬として注目されるのです。

プラス面を強調するあまり、大学教授を辞めて「意識改革運動」を全米に展開したティモシー・リアリー、
五感をシャットアウトした真っ暗なタンク内でLSDを摂取すると純粋意識に至れるかも?
というような実験を海軍の予算で探求したジョン・C・リリーなどはこのムーブメントの中心人物でした。

メスカリンという幻覚剤を摂取して意識の問題を追及した作家 オルダス・ハクスリーの著作「知覚の扉」
(The Doors of Perception : 1954 ) がサイケ・ロックバンド、ドアーズの命名由来なのは有名な話。

幻覚剤作用下では視覚的には極彩色になったり、モノやヒトが歪んで見えたり、過去や未来と思われるイメージが去来したりします。
聴覚的にはなんの変哲も無い雑音が強調され、意味ある音のように聞こえたり、メロディーがひどく美しく、あるいは醜悪に聞こえることがある。

これを最初に音楽的に表現したのがビートルズのサージェント・ペパーズですね。
そしてこれは昨日紹介したトッドの A Wizard A True Star とか、イヴァン・リンスのセカンドなど多くのアーティストに影響を与えます。 

すなわち極彩色で歪んだ模様とか、電気楽器によるひずんだり引き伸ばされた音を「サイケデリック」と呼ぶのです。
僕の中では最強のサイケ音楽はピンク・フロイドですが・・・

その後、LSDの正式名、リゼルグ酸ジエチルアミド の「酸」から隠語、アシッドが生まれ、アシッド・ジャズなどと
音楽用語にも使われて現在に至ります。単純な繰り返し、意表をつくサンプリングなど、たしかにサイケな感じですね。

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さて、トッドですが、この人は凄くサイケなんだけど、それだけでは終わらないんです。(と思います)
サイケな音作りは流行ったし、珍しくもないんだけど、それにプラスしてポップな部分やポジティヴなメッセージを載せてる人って案外少ないんですよね・・・

81年のソロ・アルバム "Healing" のB面は全部で一曲の大作。
これもトッド一人の多重録音。





ヒッピー文化のひとつの柱に「禅」があるんです。 まぁ西海岸文化だから軽薄な解釈になりがちだったんですが、
トッドは東部の人だけど凄く影響を受けてるように思う。

そして禅に十牛図ってのがあって、牛が「真理」にたとえられている。
牛=真理を捜し求める修行僧が苦労して牛を探しだし、牛を自在に操り、最後は牛にまたがって町に帰ってくる、というような意味深で象徴的な内容を十段階で説明してます。

第四段階でついに牛に触れる "Touch Bull at Four" はそのままキャット・スーティンヴンス(英)のアルバム・タイトルにもなってますね。(これ、名盤だよ)

注目すべきは真理に触れて法悦境・涅槃に入るのは10段階の真ん中過ぎのあたり。
重要なのは真理をたずさえて町に帰って、真理をふりかざすことなく、普通の人として生活することだ、というメッセージです。

この曲、次第に盛り上がって二部で天上界に達し、三部で地上に舞い戻ってくるような構成。
まさに十牛図を三部構成で表現したものだ、とオレは思ったの。 トッドはスゲェな・・・って・・・
だって法悦境に入れたミュージシャンだって数が少ないうえに、そこから帰ってきて歌い続けた人って本当にごくわずかだから・・
ジミ・ヘンドリックスなんかイったまんま死んじゃったし・・・・・

同じアルバムからもうひとつ・・・ "Compassion = 同情" という曲です。
「人生から同情が無くなったらオシマイだよ」というような歌詞です。





今日お別れの曲は1978年のソロ・アルバムから。 このアルバムもトッド一人の多重録音。
落ちてゆく夕陽を眺めてる音だよね。 そして陽が暮れてからの星空に宇宙を眺めてる・・・ このスケール感はトッドならではです。 トッドの音楽ってサイケだけど酩酊感が無いんだよな・・・
トッド自身はすごく覚めてて、そこから歌ってるんです。









この記事へのコメント

fjt
2011年02月12日 10:10
utopia再結成live.中野サンプラザで見たクチです。
メロディーのみならず、人間の深いところに踏み込んだ歌詞。あるCG作家の方とtodの話で盛り上がった事など、ミュージシャンという枠に収まりきれないスケールの大きさを感じていました。compassionの世界は特に気に入っています。まだの方は是非いらしてください。
好調
2011年02月12日 19:51

トッド仲間のfjt さんが来ましたね ww

そうそう、実はトッドの最近のアクティヴィティーとか調べたら興味深い事実がいろいろ・・・
この連載で紹介しますね。
92年の中野サンプラザに居たということは・・・汗

同じ時間と空間を共有したってことですね・・・
好調
2011年02月12日 22:31
fjt さん、緊急速報!!
トッドの97年の "With a Twist" 持ってる??
持ってなかったら今すぐ買ってください!!

カナ~りやばい・・・

これ一枚で1年間暮らせるかもよ?
ようつべで今みました・・・・

とりあえず

fjt
2011年02月22日 01:44
好調様
我がprime ministerが乱心して
すっかりご無沙汰してしましました。
申し訳ありません。
With a Twist"早速chkします。
ありがとうございました。
好調
2011年02月22日 13:47
With a Twist さっそく e-Bay で買ったからもうすぐ届きます。
学校に持ってきます

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