Todd Rundgren (6)

トッド97年のアルバム、"With a Twist" を入手。

ここのところ本当に久々にトッドを聴き返して、昔の感覚を懐かしく思い出していた日々・・・・

そこにこのアルバムがやってきた。 YouTube で何曲か聴いていて名盤だとは思っていたが、
やはり手元に届いて聴きだしたら止まらなくなってしまった。

全曲イイ というアルバムなど滅多にあるものではないが、このアルバムはそうだ。

20年ほど前、重度のトッド中毒になってそれを聴かないと一日が終わらなかった感覚、ひたすら没入して何も手につかなくなってしまう感覚に危うく引き戻されそうになってしまった。

92年の "No World Order " からあとのアルバムを全く聴いていなかったオレだが、それから5年後のこのアルバムはトッド49歳の作品、今のオレとだいたい同じ年齢で達した境地なんだな、と思うと感慨もひとしおだ。

アルバムの裏面にトッドのメッセージがでかでかと書いてあるのでまずは意訳してみよう :

「ボサ・ノヴァ? マジで? って思うかもしれないけどオレはいつだってマジだよ。
ボサ・ノヴァってのはシリアスな音楽であって、決して弱虫の音楽じゃない。
芝居じみたところが無い音楽だから本当の感覚や感情をストレートに出せるんだ。

昔から歌ってる大好きな曲をこのスタイルで再演するっていう事は全く妥当で、オレの中に疑問は無かった。
他にどうやって昔の曲を歌ったらいいんだい?」


トッド自身、これを ボサ・ノヴァ・アルバム と言っているが、これはブラジル音楽の香りは全くしないから、オレはそうは思わない。
もしボサ・ノヴァっぽいと言えるとしたら、ボサ・ノヴァに影響を与えたアメリカの50年代の歌手、すなわちチェット・ベーカーみたいな世界どまりで、やはりスタン・ゲッツがついに入り込めなかったブラジル音楽にトッドも入れていない。

もとよりトッドもそれはわかっていると思う。
北米人はあのように歌うことは出来ないということを・・・ (歌えるとしてもマイケル・フランクスのように去勢されてしまうのがオチだ)

なんと言うか、このアルバムでトッドは自分が解釈するところの ブラジル的気分 には浸ってはいるのだが、決してそれはブラジル音楽にはなっていない。
だけど、あくまで見事なまでにトッドの世界が展開されている。 

アルバム・ジャケットのトッドはちょっと南国風だが、よく見るとちゃんと背広を着ている。 南のリゾート地でリラックスして作った音楽、と思いきや、そうではないのだ。せいぜい仕事の合間に南国風のクラブに寄ってダイキリ・カクテルでも飲んでる、といった風情だ。

トッドは現在ハワイ存住らしいから南国は好きなんだろうけど・・

こうしてブラジル音楽の影響を公言してる訳だが、おそらくトッドが一番好きだったのはマルコス・ヴァリだったのではないか?
マルコスはアメリカでもずいぶんヒットしてるし、ちょっとトッドに似たところもある独特の世界を持っている。

(マルコス・ヴァリ、紹介しないといけませんね・・)

下はアルバム発表直後にTV出演したときのもの。トッド・シリーズの最初のページで紹介した曲です。
・・・トッドが振り回して歌ってるのバナナだよね・・・笑



ブラジル・イコール・バナナってのがアメリカ人の認識なんだろうな・・・ 戦前カルメン・ミランダっていうアメリカで売れたブラジルの歌手は帽子にバナナとかのフルーツを満載させられてたのを思いだしますな・・・


ところでこのアルバムでは、一曲だけ「昔の曲」ではないものを歌ってる。マーヴィン・ゲイだ。
トッドのマーヴィン・ゲイ好きを知っている人なら驚かないが、マーヴィンの曲の中でも比較的地味な歌を選んでいるのは面白い。



実はトッドは尊敬する人の音楽をカヴァーすることが多く、ビートルズのカヴァーだけでアルバム一枚を作っているほどだ。
その他ジミ・ヘンの "If Six Was Nine" なんていう曲もやってる。(映画 "Easy Rider" で使われた歌だ。)
そしてトッドがやるカヴァーはオリジナルに劣らないクオリティーを持っていることはここに強調しておきたい。

もうひとつ、このアルバム、ベースはカシムですね。やっぱりフラット・ワウンド弦で弾いてると思う。

とにかくトッド好きな人は買ったほうがいいですよ、これ。
オレは長期間トッドと関係を切っていたけど、結局ブラジル音楽をしこたま聴いたあとの今、これを聴けたのはグッド・タイミングだったと思います。


この記事へのコメント

好調:追記
2011年03月04日 23:21
トッドの発言見ると、ボサノヴァが芸人音楽の対極にある、っていうポイントをおさえてるよね。
「芝居じみたとこが無い」ってのは様式がない、ってことでしょう。

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