Shelagh McDonald

英国音楽・・・・・ オレにとっては大好きなジャンルであるにもかかわらず、ここで紹介することが少なく、紹介するにしても日本ではマイナーなアーティストばかりになってしまうのは何故か・・・?

前にも述べたとおり、有名どころのハード・ロックやプログレ・ロックのバンドに、あまり思い入れが無いのが最大の理由。
さらに紹介したい楽曲の多くがようつべに上がっていないことも大きい。

ところで、日本で有名な英国音楽のほとんどが、アメリカ経由で紹介されてきたことに気がついているだろうか。

ビートルズ、ツェッペリンからエルトン・ジョン、ロッド・スチュワートまで、どれもアメリカで大ヒットを飛ばしてから、その情報が日本にやってきて名前が売れた。
80年代、第二次ブリティッシュ・インヴェイジョンの音楽もその点は同様である。

そこで考えてほしい。

アメリカで売れたブラジル音楽、すなわちマルコス・ヴァリやセルヂオ・メンデスだけを聴いてブラジル音楽を語ることが出来ないのと同様、
イギリス音楽もアメリカで売れたものだけを聴いていたのでは、その本質に迫ることは不可能であることを・・・・・


ブラジル音楽で言うと、アメリカでは無名だけどブラジルでは大スターという人はいくらでも居る。
例えばガル・コスタやカエターノが、アメリカで売れたことなど一度も無い。
彼らがキャリアの初期に標榜したトロピカリズモは、その思想の一部にアンチ・アメリカをさえ含んでいた。

ところがイギリス音楽になるとそうした対米関係の構築は難しく、ほとんど不可能である。

理由はおそらく二つある。

ひとつ
英国の音楽マーケットが小さすぎる。 ブラジルの人口二億人、英国六千万人。

ふたつ
英語の歌はすぐさまアメリカでも受け入れられるから、それが英国発であることは特に意識はされない。
したがって才能のあるイギリス人アーティストはアメリカに流出しがちであり、極端な場合、アメリカ人になりきってしまう者もいる。

つまり、英国国内だけのスターは居るにせよ、それがアメリカン・シーンにおけるスター並みに、世界的に巨大な存在になることはほとんどない。

だから 「英国音楽」 で区切って紹介するとなると、どうしても日本やアメリカでは一般には知られていないマイナーなものにならざるを得ない。
でもマイナーと思われる英国音楽の多くが、実際は非常に高度な音楽性を持っていることを知ってほしい。

純粋英国音楽に特有な、ある種の香気や精神性が見えてくると、メジャーな英国音楽の聴き方も変わってくると思います。


******


シーラ・マクドナルド  1948年スコットランド生まれ。 70年と71年、二枚のアルバムを残して消息不明になる。

録音はブリティッシュ・トラッド音楽の大物たちがバックアップ、この時代の英国音楽最良の部分が後世まで語り継がれることになった。
この曲、ギターはリチャード・トンプソンだと思う。





以前紹介した ペンタングル や サンディー・デニー の音楽と似てますね。 実際ペンタングルのメンバーも参加してます。
彼女の音楽には、その後の英国音楽の萌芽のようなものがいくつも見えるように思いませんか?




2005年、シーラのアルバムがCDでリイシューされ、彼女の話題が新聞などに載るようになると、シーラ本人がそれを見て新聞社に現れる・・・・
「私がシーラ・マクドナルドよ」

そこで彼女の過去が明らかになった。

向精神性薬物によるバッド・トリップで精神を犯され、幻覚に悩まされ声もつぶれる。
故郷スコットランドに帰って両親と暮らし、やがて本屋を営む男性と結婚。
しかし生活は苦しく、生活保護を受けつつ、ついにはテントで生活するほどに世間と乖離した。

復帰デビューの話が持ち上がるが現在に至るも実現していない。

おそらく精神が繊細で脆い人なんだと思う。 それが素晴らしい音楽として結実したアルバムがたった二枚であること、
70年代によく見られた薬物過剰摂取による死亡ではなく、精神崩壊によって存命中でありながら音楽が出来なくなったことは、ことさら悲劇と言う他はない。









不思議なことだが、イギリスでこういう音楽をやっていた人達はサンディー・デニーや ニック・ドレイク のように早死にしたり、
シーラのように消息不明になってしまう人が多いように思う。
純粋英国音楽の演奏家は、なにかアメリカナイズを嫌うところがあって、リチャード・トンプソンなど "Yankee Go Home" なんていう歌がある。

実際彼らの音楽に見事なまでに見当たらないのが、アメリカ音楽、あるいはアメリカで売れた英国音楽の多くに見られる 「黒っぽさ」 なのだ。

そういう黒っぽさが次第に俗化していき、最後はディスコ音楽にまで退化していく70年代後半にむかって、彼らは沈黙せざるを得なかったのかもしれない。
時代に迎合するくらいなら沈黙するほうがマシだったのだろう。


(以下、純粋英国音楽続きます。 復習に英国音楽の過去記事は こちら。)





この記事へのコメント

変態通行人
2011年10月23日 04:29
なんだか生きるのって難しいなんて殊勝なこと考えちゃう記事でした。復習するにつけこの辺の音は好きです。お品がある感じは市場に迎合すること無く身を削った結果でせうか。
確かに金のにおいがしませんね。。バカバカしいとおもいつつ集金工作するとそういう音になると思う。
なんだか美しい声が悲しく聞こえマフ。
変態通行人
2011年10月23日 04:34
そっか 英国音楽ではなくて
純粋英国音楽ってことですね。
楽器 いいな ビートにたいして やわらかボーカル カッティングじゃないギター。。良く聞くとふわんとしたものがかさなってしっかりできてる。。

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  • Lesley Duncan

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